中国裁判所はUSDTによる賃金支払いを禁止
中国現地メディアの報道によると、中国裁判所は最近、企業がテザー(Tether/USDT)で賃金を支払うことを禁止したことが明らかになった。
中国の朝陽裁判所は7月2日(土曜日)、労働争議訴訟において、企業はUSDTで賃金を支払うことはできないと判決を下した。裁判所は、仮想通貨は市場で通貨として使用されるべきではなく、使用できないと宣言しており、企業は人民元で給与とボーナスの滞納分を支払うよう命じられた。
訴訟を起こしたのは、ネットワーク技術会社の副社長である沈氏で、彼の月給は5万元で、社会保険やプロビデントファンドを差し引いた後の実質賃金は2,574元+仮想通貨USDTとして支払われていたとのこと。同氏は6月に退職し、会社と交渉して、滞納賃金と残業代を受け取ったものの、会社側はこれらをUSDTで支払っており、沈氏は人民元で支払うよう同社に要求している。
裁判所は、「労働法にて賃金は通貨の形で従業員に支払われるべき」と明確に規定されているとの見解を示し、USDTは通貨ではなく、仮想通貨には法定通貨の法的地位はないと述べた。
仮想通貨として利用されるUSDT
人民元は同法に基づき、中華人民共和国の法定通貨に指定されているが、問題のUSDTテザーは、同国では仮想通貨の一種として使用することが認められていない。
実際、中国ではブロックチェーンやデジタルアセット事業に携わる企業の中には、USDTやその他の仮想通貨を従業員への支払いに使っているところが多々存在している。中国政府は仮想通貨に関して否定的なスタンスを持っており、2021年、中国政府が仮想通貨のマイニングと取引に対して取り締まりを強化したことで、仮想通貨市場における中国の巨大な影響力は低下している。
一方で、Tether USDTは、米国の国庫準備金や現金預金などで保有する米ドルを裏付けに、米ドルと1対1の比率でペッグした主要なステーブルコインであり、近年、その取引量が急増していることでも知られている。その証拠に、USDTは、時価総額でビットコイン(Bitcoin/BTC)、イーサリアム(Ethereum/ETH)に次ぐ第3位の仮想通貨となっており、USDTの1日の取引量は570億ドル(約7.7兆円)で、ビットコインの1日の取引量全体よりも247%多い。
USDTの準備金が中国の不動産会社Evergrande(恒大集団)や中国商業紙へのエクスポージャーがあると考える人が多いため、投資家やヘッジファンドによって大量のUSDTの償還が行われているというのが現状だ。