EU銀行規制当局、CircleのUSDCを初の「重要な電子マネートークン」に指定し監督権を引き継ぐ

MiCA規制下で初の重要トークン指定と主要監督権の移管

EBA(欧州銀行監督局)は、MiCA(暗号資産市場規制)に基づき、Circle社が発行する米ドル連動型ステーブルコインUSDCを重要な電子マネートークン(Significant EMT)に指定した。

EU(欧州連合)域内に届け出られた45種類の電子マネートークンの中で、この“重要”指定を受けたのはUSDCが初の事例となる。この指定に伴い、USDCの主要な監督権限は従来のフランス健全性監督・破綻処理当局(ACPR)からEBAへと移管される。

EBAは、USDCの自己資金、資産準備金、流動性要件、ならびに回復・償還計画の直接監督を担当することになる。一方、ACPRはガバナンスや外部委託、利益相反、役員の適格性審査といった組織統治面に関する監督を引き続き担うため、二重の監督体制が構築される。

発行体へ課される厳格な健全性要件と準備金規制の課題

「重要」なトークンへの分類は単なるラベルではなく、市場の緊張下でも確実な償還能力を維持するための追加的な健全性義務を意味する。

特に影響が大きいのが流動性基準です。MiCAの基準では、「重要な電子マネートークン」の発行体に対し、準備資産の最大60%を民間銀行の預金として保有させることが可能となります。これは標準枠組みの最低30%を大幅に上回る水準だ。これに対しUSDCの発行元であるCircle(サークル)社は、銀行預金比率を高める要求について、流動性の高い国債管理と比較して信用リスクや取引先の集中リスクを高める懸念があると主張し、より柔軟な流動性枠組みを求めている。

欧州の規制当局内部でもリスク管理の適正化に向けた準備金ルールの見直し論議が進められており、制度設計は現在進行形で調整が続けられている。

欧州暗号資産市場の構造変化と国際的な規制連携

この規制移管は、欧州の暗号資産市場における取扱銘柄の構図にも大きな影響を及ぼしている。

ライバルである最大手ステーブルコインのテザー(Tether/USDT)は、MiCAに基づく認可取得を見送ったため、EUの主要な取引所から相次いで上場廃止となった。その一方で、Circle社は規制遵守の姿勢を強めており、バイナンス(Binance)による巨額出資やクラーケン(Kraken)での取扱拡大など、EU市場におけるプレゼンスを高めている。

さらに、USDCはEU域内(Circle Internet Financial Europe SAS)と米国(Circle Internet Financial, LLC)の複数拠点で発行されているため、国境を越えた監督の一貫性が求められる。

これに対応するため、EBAは米国のNYDFS(ニューヨーク州金融サービス局)と覚書を締結し、情報交換や危機対応時の相互協調体制を整備。EUはUSDCを単なる個別の暗号資産商品ではなく、中央集権的な健全性監督を要する重要金融インフラとして位置づけ、世界に先駆けた枠組みの構築を進めている。

 

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