ステーブルコイン拡大で金融政策の再考も ECBが危機感を示す

欧州中央銀行の建物を描いたイラスト。ユーロ圏の金融政策やステーブルコイン規制を象徴する構図。

金利判断への影響が現実味

ステーブルコイン市場の急拡大がユーロ圏の金融安定を揺らし、ECB(欧州中央銀行)の金利判断に外部要因が入り込む可能性が強まっている。

ドル建てステーブルコインの供給増加と資金移動の速さは従来の預金とは性質が異なり、大規模償還が発生すれば米国債の急激な売却を通じて欧州市場にも波及しかねない。金融環境の変動はインフレを揺さぶり、ECBが金融政策のペースや方向性を読み替える必要が生じる懸念が高まっている。

ステーブルコイン拡大が金融安定に与える圧力

ECB理事会メンバーでオランダ中央銀行総裁のオラフ・スレイペン(Olaf Sleijpen)氏は、ドル建てステーブルコインの増加が予想を上回るペースで進んでいると指摘した。

米国ではGENIUS法成立後、ドル連動トークンの取引量が大きく増え、世界全体のステーブルコイン供給は3,000億ドル(約46.6兆円)を超えている。裏付け資産の多くは米国債で構成されるため、大量償還が起きれば発行体が米国債を迅速に売却する可能性がある。利回り上昇を通じて欧州市場に金融引き締め圧力が波及し、ECBの金利判断にも影響が出るおそれがある。

スレイペン氏は、市場変動が発生した場合は金融安定のための手段を優先的に用いるとしつつも、状況によっては利上げか利下げかの判断が難しい局面もあり得ると述べた。

EUで強まる規制整備と通貨主権の課題

ECB関係者は、ステーブルコインの浸透がユーロ圏の決済や貯蓄行動を変化させ、民間発行のドル建てトークンがユーロの役割を侵食する可能性にも警戒している。

利子付きステーブルコインが普及すれば、預金が銀行を離れて信用供給が弱まるリスクもある。こうした課題に対応するため、EUはMiCA規制の下で準備金の質、償還条件、情報開示など発行体に求める基準を強化している。また、多国籍発行モデルがユーロ圏の流動性を不安定化させる可能性についても警告されており、必要であれば発行モデルの構造自体を厳格化する方針だ。

欧州ではステーブルコインの代替としてデジタルユーロの整備も進められており、決済インフラの安全性確保と通貨主権維持をにらんだ取り組みが進行している。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム