国際協定への署名と導入の枠組み
UAE(アラブ首長国連邦)財務省は、OECD(経済協力開発機構)が策定したCARF(仮想通貨報告枠組み)に参加するため、多国間権限ある当局協定(MCAA)に署名した。
これによりUAEは、仮想通貨取引に関する税務データを各国当局と自動交換する体制を整える。
導入は2027年、初回の情報交換は2028年開始の予定である。UAEは2024年11月にCARF導入方針を表明しており、国際基準との整合を早期に進める姿勢を示してきた。狙いは脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)の抑止、投資家保護、規制の一貫性の確保であり、金融ハブとしての信頼性を一段と高める方針である。
CARFによる透明性と規制強化
CARFは、仮想通貨取引所やブローカー、カストディアン、ウォレット運営者を対象に、顧客の購入・売却・送金などの取引情報の報告を求める枠組みである。
報告されたデータは管轄区域間で自動的に共有され、税務執行の実効性と市場の透明性が高まる。UAE財務省は、この取り組みが企業と投資家に法的明確性と予見可能性を与えるとしており、施行までの準備期間に内部体制の整備を促す。
ChaiDEX共同創設者兼CTOのNitesh Mishra氏は、UAEは世界的な税の透明性基準に準拠し、規制当局や国際パートナーとの信頼関係が強化されると評価している。機関投資家の参入に資する環境整備という観点でも効果が見込まれる。
意見募集と国際的な広がり
UAE財務省は国内実装に向け、9月15日から11月8日までパブリックコメントを募集しており、関係者や専門家に対し、枠組みの影響や明確化が必要な論点への意見提出を求め、最終ルールの精度を高める狙いである。
実務面では、証券商品局(SCA)、ドバイのVARA、アブダビのFSRA、UAE中央銀行(CBUAE)など既存の監督機関と連携し、発行から保管、取引に至る各段階をCARFと接続する。多層的な監督と国際的な税務コンプライアンスを結び付けることで、国内制度とグローバル基準の整合を確保する構えである。
国際的にもCARF導入の動きは広がっており、ニュージーランド、オーストラリア、オランダ、スイス、韓国などが参加の準備を進める。UAEは並行してIMF(国際通貨基金)代表団と経済・金融情勢に関する協議も行い、国際的な政策対話の枠組みを強化している。今回の署名により、UAEは国際ベストプラクティスに沿った仮想通貨の税務報告体制を整備し、透明で公正な市場の基盤を固める方針である。