ナイジェリアはバイナンス幹部を仮想通貨問題について話し合うよう招待した後、拘束か

ナイジェリア当局がバイナンス幹部2名を拘束

ナイジェリア当局が、バイナンス(Binance)に勤務する元米国連邦捜査官とアフリカ地域マネージャーを拘束したと報じられたことが明らかになった。

ナイジェリア当局は、バイナンスの仮想通貨犯罪捜査のトップと地域マネージャーを、ナイジェリア当局からの招待を受けて入国した直後に拘束したと報じられている。拘束されているのは、元米国連邦捜査官で、バイナンスの犯罪捜査チームに加わったティグラン・ガンバリヤン(Tigran Gambaryan)氏と、ケニアに拠点を置くバイナンスのアフリカ地域マネージャー、ナディーム・アンジャワラ(Nadeem Anjarwalla)氏は、ナイジェリア当局の招きでナイジェリアに到着した後、刑事責任を明らかにされることなく拘束されたとのこと。

拘束の背後には巨額の使途不明金

争点は260億ドル(3.8兆円)の使途不明金をめぐるものであり、仮想通貨取引所が国の通貨を不安定にしているという同国政府の非難に対処するためにナイジェリアの首都を訪れていた。

ナイジェリア政府が話し合いを求めているにもかかわらず、彼らの拘束に関する公式声明は発表されておらず、正式な罪状もなく、警備された住居に拘束されているとのこと。彼らはアブジャの政府施設に2週間拘束され、パスポートは没収。ガンバリヤン氏の妻は「彼はどうしているのか、どうなるのか、いつ戻ってくるのか。それがわからないことが私を苦しめているのです」と語っている。

彼らが拘束されたのは2024年2月26日(月曜日)で、2人は取引所との継続的な紛争に対処するため、当局からの招待に応じてナイジェリア入りしていた。2人は、それぞれ米国務省と英国外務省の職員に面会されたと伝えられているが、ナイジェリア政府の警備員が面会時に同席しており、プライバシーが制限されている、と家族は指摘している。

経済的課題を抱えるナイジェリア当局は仮想通貨取引所への監視を強化

ナイジェリア当局は、ナイラの大幅な切り下げやインフレ率の高さなど、同国が抱える経済的課題の中で、仮想通貨プラットフォームに対する監視を強化している。

そのため、通貨安を抑制するため、政府は以前、通信事業者やインターネットサービスプロバイダーに対し、Binance、コインベース(Coinbase)、Kraken(クラーケン)を含む複数の仮想通貨取引所へのアクセスを制限するよう命じている。

Chainalysis『Sub Saharan Africa Countries by cryptocurrency receivid,Jul 2022-Jun 2023(日本語訳:サハラ以南のアフリカ諸国の仮想通貨受取額別、2022年7月~2023年6月)』より画像引用

近年、ナイジェリアの人々は貯蓄の逃避先として仮想通貨を利用することが増えており、1月には30%近いインフレが発生し、通貨は急速に下落したため、ナイジェリアは今年、世界的に最も貧しい国のひとつとなった。人口の3分の2が貧困にあえぐナイジェリアは、インドに次ぐ世界第2位の仮想通貨導入国である。Chainalysis(チェイナリシス)社の調査によると、ナイジェリア人は2023年6月までの1年間に600億ドル(約8.8兆円)にのぼる仮想通貨取引額を記録している。

また、政府が外国為替と公式為替レートを厳しく管理しているため、ナイジェリア人の多くは代替手段として、米ドルの価値に連動するデジタル通貨であるステーブルコインを選んでいる。この動きは、現地通貨であるナイラとドルとの為替レートが政府によって設定された公式レートから大きく乖離するパラレルマーケットを事実上生み出しており、バイナンスは最も好まれているプラットフォームであるため、為替トレーダーの間では、不注意にもこの非公式レートの基準となっている。