BIS、香港、イスラエル中央銀行がリテールCBDCを開始
BIS(国際決済銀行)、HKMA(香港金融管理局)、イスラエル銀行(Bank of Israel:イスラエルの中央銀行)が提携し、rCBDC(安全な小売中央銀行デジタル通貨=リテールCBDC)の実現可能性を証明した事が2023年9月12日(火曜日)に発表された。
Project Sela proposes a new financial infrastructure, the Access Enabler, which facilitates customer-facing activities without ever holding users’ rCBDC. It removes complexity, costs + risks compared w current payment providers #BISInnovationHub @hkmagovhk https://t.co/znVp81gQol pic.twitter.com/hItQamQc0K
— Bank for International Settlements (@BIS_org) September 12, 2023
プロジェクトセラは、ユーザーのrCBDC(リテールCBDC)を保持することなく顧客対応活動を促進する、新しい金融インフラストラクチャであるアクセス・イネーブラーを提案しています。現在の決済プロバイダーと比較して、複雑さ、コスト、リスクが軽減されます。
BISがコーディネートした「プロジェクト・セラ(Project Sela)」と名付けられた共同実験では、サイバーセキュリティ、ユーザーのプライバシー、容易なアクセスを危険にさらすことなく、法定通貨の利点を提供できるrCBDCが実証されたと伝えられている。同プロジェクトは、デジタル・シェケル(イスラエルン法定通貨シュケルのデジタル版)に関するイスラエル中央銀行の進行中の取り組みと、デジタル香港ドルの可能性についてのHKMAのケーススタディを利用したとのことだ。BISイノベーション・ハブ香港センター所長のベネディクト・ノレンズ(Bénédicte Nolens)氏は、共同プロジェクトでは「アクセス・イネーブラー」と呼ばれる新しいCBDC仲介システムが導入されたと述べている。
同氏によるとアクセス・イネーブラーは、ユーザーの rCBDC を独自貸借対照表に保持しないことで、流動性と決済の懸念を軽減するという。また同氏は、この機能によりブロックチェーンベースの決済サービスの運営コストが削減されるはずだと主張。
各代表の声
HKMAのハワード・リー(Howard Lee)副最高経営責任者は、プロジェクト・セラは香港の政府発行デジタル通貨の進歩を支援できる可能性があると述べている。
他国のアペックス銀行(Apex Bank)はセラの発見を活用し、独自CDBCインフラストラクチャーとエコシステムを構築するだろうとリー氏は語り、イスラエル銀行アンドリュー・アビル(Andrew Abir)副総裁氏は次のように述べている。
このプロジェクトは、私たちが念頭に置いていたモデルの実現可能性を証明しました。中央銀行の資金がデジタル化される場合、サイバーセキュリティが鍵となり、このプロジェクトはCBDCのサイバーセキュリティ要素をパートナーと議論し研究する機会を提供しました。
世界中のCBDC
CBDC は、主権政府または中央銀行が発行する法定通貨のデジタル表現で、この概念は1985年頃に遡り、ジェームズ・トービン(James Tobin)氏が執筆した経済論文で言及されている。
共和党代表フレンチ・ヒル(French Hill)氏のような米国の政策立案者は、米国金融システムに対する広範なリスクを理由に、依然としてリテールCBDCに強く反対。米国連邦準備制度理事会のミシェル・W・ボウマン(Michelle W. Bowman)総裁も2023年4月に同様の発言を繰り返し、CBDCの潜在的な懸念がメリットを上回ると述べている。
一方で、中国、ジャマイカ、ナイジェリアなどの国々は、政府管理の仮想通貨は集中的な監視を必要とせずにほぼ即時の価値交換を提供するという仮想通貨とDeFi(分散型金融)の目的に反するという議論にもかかわらず、それぞれのCBDCを立ち上げている。