ブラックロックによる中国フレキシブル株式ファンドは投資家の関心を掴めず
ブラックロック(BlackRock)は、2023年9月5日(火曜日)付の株主への書簡で、同年11月7日付けで中国フレキシブル・エクイティ・ファンドを終了すると発表した事が分かった。
具体的には、BGF(ブラックロック・グローバル・ファンド)の提供は、2017年10月の開始以来、わずか2,230万ドル(約33億円)の資産を蓄積した後、運営を終了することになる。このニュースは、SEC(米国証券取引委員会)がスポットビットコインETF(ビットコイン上場投資信託)申請に関連する決定を少なくとも10月まで延期した直後に発表されている。
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この遅延は、同社の申請書と、今年初めに提出されたウィズダムツリー(WisdomTree)、インベスコ・ギャラクシー(Invesco Galaxy)、ヴァンエック(VanEck)、ビットワイズ(Bitwise)などの申請書に影響を与える事が予想されている。米国コロンビア特別区巡回控訴裁判所(DC Circuit Court of Appeals)は、グレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)に対し、ビットコイン・トラストのETFへの転換を進めることを許可した。
小規模なファンド運用継続はコスト上昇で株主の利益にならない
裁判所は、同ファンドのNYSE Arca(米・シカゴの証券取引所)への上場を「恣意的かつ気まぐれ」であるとして差し止めた以前のSEC決定を覆した。
BGF会長のデニス・ヴォス(Denise Voss)氏は、ブラックロックの中国フレキシブル・エクイティ・ファンドに関する決定について、「新規投資家の関心の欠如」と、将来の大幅なサブスクリプションの見通しが暗いと説明。さらに、このような小規模なファンドの運用を続けるとコストが上昇し、株主の利益にならないと指摘している。その結果、同社は2023年8月24日をもって同ファンドへの新規投資を停止。ただし、既存の定期貯蓄者は、8月の締め切り日より前に拠出が合意されている限り、10月31日までは引き続き参加できる。
現在、株主には3つの選択肢があり、別の同社ファンドに無料で切り替えるか、11月7日の清算日までに償還またはファンドの閉鎖時に保有株が自動的に償還されるかである。
中国との関係を監視されるブラックロック
今回の閉鎖は、中国企業に対する米国の投資に対する懸念の高まりを受けて行われている。
2023年8月、国家安全保障上の脅威と判断された中国企業への投資に対する議会調査を受けて、ブラックロックなどの企業は監視強化に備え、8月9日に署名された大統領令は、中国の一部テクノロジー産業への米国の投資に制限を課した。さらに、7月31日、中国共産党に関する下院特別委員会は、同社が米国の利益を損なう中国企業に投資していると非難。委員会は同社の中国での株式保有に関連する文書を要求した。ブルームバーグのデータによると、米国の投資信託やETFは全体で2,940億ドル(約43.4兆円)近くを中国の株式や債券に投資しており、そのすべてが懸念される企業にあるわけではないが、ブラックロック、バンガード、フィデリティ、DWS は、現在議会の監視下にある中国のエクスポージャーで資金を管理している。
規制当局の注目が高まっていることを考慮すると、ブラックロックが中国の小規模ファンドを閉鎖するという動きは、リスクとコストを抑制する可能性があるものの、同社の中国への広範な投資は依然として監視下にある。