フランスのデータ規制当局CNIL がワールドコインのパリ拠点を家宅捜査
フランスのデータ規制当局CNIL(フランス共和国国家情報自由委員会)は、仮想通貨プロジェクトのプライバシー慣行に対する監視が高まる中、2023年8月30日(水曜日)、パリのワールドコイン(Worldcoin)事務所に予告なしに急襲し、幹部に尋問した事が分かった。
ChatGPT創設者であるサム・アルトマン(Sam Altman)氏の仮想通貨プロジェクトワールドコインは、ユーザーの生体認証データを収集しているとして現在、フランス当局による厳しい監視下にある。監視団は、ワールドコインの仮想通貨サービスにアクセスするために人々の眼球をスキャンするワールドコインのオーブセンターに予期せず到着した、と従業員2人が現地メディアに語った。
規制当局代表者はフランス事業を監督する同社のマネージャーと面会。パリのオーブセンターは、ワールドコインがドイツ、ポルトガル、スペイン、英国を含むヨーロッパ各地に設置した多くのハブのうちの1つにすぎない。
データ収集の合法性には疑問符
CNILは仮想通貨スタートアップに対して深い懸念を表明し、7月には大手メディアのロイターに対し「生体認証データの保存条件と同様に、この(データの)収集の合法性には疑問があるようだ」と語っていた。
ワールドコインの悪名の一因は、同社の共同創設者がOpenAIの社長であるサム・アルトマン氏であることに由来している。OpenAI は2022年、ChatGPTと呼ばれる人工知能チャットボットを発表したことで、テクノロジー界に旋風を巻き起こしたマイクロソフト(Microsoft)が支援する企業だ。CNILは現在、バイエルン州データ保護局と協力し、ワールドコインのプライバシー慣行を数カ月間調査する予定だ。
ワールドコインの目標はロボットではなく人間のみが技術を使用
ワールドコインのEU本部はバイエルン州エアランゲンにあり、ドイツの監視機関は同プロジェクトがGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)に準拠しているかどうかについて欧州全体の調査を主導。
GDPR では、自由かつ明示的な同意などのいくつかの条件がある場合を除き、生体認証の処理は禁止されている。アルトマン氏は、ツール・フォー・ヒューマニティと呼ばれるワールドコインプロジェクトの背後にあるテクノロジー企業を率いるアレックス・ブラニア(Alex Blania)氏と提携。ワールドコインプラットフォームとデジタルウォレットを使用したい人は誰でも、いわゆるオーブ(Orbs)を覗き込み、虹彩を写真に撮らなければならない。
同社によると、目標はロボットではなく人間だけがワールドコインの技術を使用できるようにすることであり、目の構造がそのための最良の方法であると主張。現時点で約1,500個の目をスキャンするオーブが世界中に出荷されているものの、同プロジェクトは各国で厳しい状況下に置かれているのが現状だ。