北朝鮮支援の仮想通貨ハッキングが増加していると専門家が警告

北朝鮮国家支援サイバー犯罪が増加

サイバー専門家は、ブロックチェーン企業を標的とした一連の強盗事件を受け、北朝鮮国家に支援されたハッカーが主導する仮想通貨の盗難が急増していると警告したことが明らかになった。

TRM Labsのブロックチェーンアナリストニック・カールセン(Nick Carlsen)氏は、東アジアの国が仮想通貨の窃盗をより巧妙に実行しているため、サイバー対応の金融犯罪、特に北朝鮮が行っているとされる犯罪が過去数年間で加速していると指摘した。同氏はCNAS(Center for a New American Security=新アメリカ安全保障センター)主催のウェビナーで、今の脅威状況は、金融窃盗に関して言えば、これまでと同じくらいひどいと思うと述べた。

北朝鮮サイバー軍によるハッキング被害への米国政府の対応

直近の2カ月で、カリフォルニア州にある2つの仮想通貨企業、HarmonyNomad Bridgeは、未知の犯人からのハッキングを受け、1億ドル(約135億円)以上の仮想通貨を失っているのが現状だ。

現在、両社ともハッカーを追跡し、盗まれた資金を回収するために法執行機関と協力しているが、回収には至っていない。また、2022年に7件の大規模な仮想通貨ハッキングが発生しており、そのうちのいくつかは米国が北朝鮮と結びついていることも明らかになっている。これを受けてUSDT(United States Department of the Treasury=米国財務省)は、NEXTMONEYの特集記事「北朝鮮のハッカーとの関係をめぐってクリプトミキサーに制裁を課す」で報じたように、ハッカーが70億ドル(約9,447億円)以上の仮想通貨のロンダリング(資金洗浄)を助けたとされる、仮想通貨ミキサーTornado Cashに制裁を科すと発表したばかりである。

制裁を実施する背景には、北朝鮮に支援されたハッカーを含むサイバー集団に、サイバー犯罪の収益を洗浄するためにTornado Cashのプラットフォームが利用された事がある。同省は5月にも、北朝鮮政府の支援を受けたハッカーからの資金洗浄に利用されているとして、別の仮想通貨ミキサーであるBlender.ioに制裁を課しており、バイデン政権のサイバーおよび新興技術担当副国家安全保障顧問のアン・ニューバーガー(Anne Neuberger)氏は次のように語っている。

北朝鮮のサイバー能力を懸念しています。北朝鮮は盗んだ仮想通貨の資金の最大3分の1をミサイルプログラムの資金として使っています。

2022年の国連報告書では、2020年から2021年にかけて、北朝鮮に支援されたハッカーが5,000万ドル(約76.5億円)以上のデジタル資産を盗み、同国のミサイルプログラムの資金源にしていることが判明したとBBCは報じている。さらに、同報告書によると、北米、ヨーロッパ、アジアの少なくとも3つの仮想通貨取引所を標的とした攻撃であったことも明らかになっており、大きな問題となっている。

北朝鮮のハッカーとの関係をめぐってクリプトミキサーに制裁を課す

2022.08.09