米国金融安定監視評議会、金融環境はフィンテックの影響拡大に備えていないと指摘

米国金融安定監視評議会が金融環境はフィンテックの影響拡大に備えていないと指摘

FSOC(U.S. Financial Stability Oversight Council:米国金融安定監視評議会)は、新たに発表した2024年年次報告書で、金融サービスと決済分野の両セクターが従来の銀行環境と関連して持つリスクと潜在的なメリットを指摘した。

FSOCの2024年年次報告書は、米国の金融システムにおけるレジリエンス(※resilience:回復力・しなやかさ)という一貫したテーマを強調するとともに、新たな脅威に対する警戒の強化を訴えている。

ジャネット・L・イエレン(Janet L. Yellen)財務長官は、経済的繁栄と金融安定性の間には本質的なつながりがあることを強調した。「米国経済と米国民の繁栄は、米国の金融システムの安定性にかかっています」と述べたうえで、つぎのように語っている。

今年、金融システムは引き続き、インフレ率の低下、堅調な経済成長、健全な労働市場を特徴とする強力な経済を支えてきました。しかし、金融システムの回復力を維持し、新たな脆弱性に対処することに引き続き注力する必要があります。年次報告書は、市場の回復力、効率性、安定性を高めるために、現在および新たなリスクを監視し、対応するという評議会の取り組みを示しています。


安定性を強化のための戦略的措置が推奨される

評議会メンバーとその機関の共同努力の成果であるこの包括的な文書は、現在の金融情勢を描き出し、主要な脆弱性を特定し、安定性を強化するための戦略的措置を推奨している。

仮想通貨、フィンテック、従来の金融の融合は、金融エコシステムの大きな進化を表しており、この相互接続性は多くのメリットをもたらすが、複雑なリスクももたらすと指摘したうえで、FSOCは同報告書の中で次のように述べている。

2024年第1四半期の市場のボラティリティと年間を通じての運用上の出来事は、銀行が適切なリスク管理と緊急時対応計画を通じて財務的および運用的に回復力を持つ必要があることを強調している。


監視下にある仮想通貨市場

仮想通貨市場価値は2024年半ば時点で2兆ドル(約305.9兆円)弱で、S&P500の時価総額48兆ドル(約7,342兆円)を大幅に下回っている。

規模は控えめであるものの、FSOCは仮想通貨エコシステムが従来の金融市場とより密接に結びつく場合の潜在的なリスクを強調。FSOCは現在ステーブルコインに関心を寄せており、暴落の影響を受けやすく、市場の不透明性と集中度が高いため、依然として重要な懸念事項となっている。

報告書の中で、ステーブルコインに関する法律、証券として分類されていない仮想通貨スポット市場に対する権限、仮想通貨の事業体と子会社に対する監督、仮想通貨、ステーブルコイン、その他のデジタル資産のリスクについて消費者に情報を提供するための継続的な取り組みなど、暗号セクターのリスクを軽減するためのいくつかの措置を提案。継続的な監視と予防措置が必要な分野を特定し、金融システムのインフラストラクチャーを強化し、経済の安定性を損なう可能性のある潜在的なシステムリスクに対処することを目指すべく、以下のように指摘している。

  • サイバーセキュリティ:サイバーインシデントの頻度を強調した報告書は、重要業務への潜在的な混乱軽減のために、金融セクター内での協力と情報共有を強化するよう要求
  • 預金機関:米国の銀行システムは依然として堅牢だが、評議会は、商業用不動産の新たな弱点と、銀行セクターが預金以外の資金源に依存していることについて懸念を表明
  • サードパーティサービスプロバイダー:金融機関がサードパーティへの依存を強めていることから、評議会は規制監視を強化し、データセキュリティとシステム管理を確保するための立法措置を推進
  • 商業用不動産(CRE):FSOCは、CRE、特にオフィス部門における信用リスクの増大を指摘し、市場状況とローンの質における相関リスクの監視に引き続き注意を払うよう要求
  • デジタル資産:評議会は、仮想通貨とステーブルコインの市場拡大に引き続き慎重であり、リスク管理基準と規制当局を確立するための法的枠組みを提唱
  • 投資ファンド:マネーマーケットファンドの規制における進歩を認識しつつ、評議会は、市場ストレス時のオープンエンドファンドには依然として課題があり、流動性と透明性を高めるための継続的な規制関与を推進

仮想通貨とFinTechは金融エコシステムにおける新興勢力であり、放置すればシステミックリスクを引き起こす可能性があり、同報告書は、規制の明確化と積極的な監視がベスト プラクティスだけでなく必要不可欠なものとなった重要な瞬間を示唆。規制を怠れば、こうしたイノベーションが金融システムの発展のツールではなく、より広範な金融システムへの脅威となる危険性がある改めて指摘している。

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